しらかわのぶろぐ

アニメスタッフについての雑記が多いかもです…

「君の名は。」の回想シーン処理

君の名は。」の映像処理で個人的に最も気になったのは、中盤で瀧が祠の中に入った後トリップする?ようなシーンですね。

エンドテロップなどを見るとどうやら回想シーンと名付けられているようなのでそう呼びます。

回想シーンはどうやら独立したパートになっているようで回想シーンの「演出・作画・撮影」として四宮義俊さんという方がクレジットされています。

↓四宮さんのサイト

四宮義俊 / SHINOMIYA YOSHITOSHI official site

プロフィールを見ると、本業は日本画家さんで映画などの仕事もされているようです。アニメでは言の葉の庭のポスターイラスト、背景などを担当されているようです。

 

この回想シーン、大まかに二つの処理で構成されているようでした。まずはキャラクターが通常のセル塗り(べた塗り)ではなく、細かくタッチが入れられていて、フレデリックバックのような…というと言い過ぎかもしれませんが、たぶんデジタルの自動処理では不可能で、一枚一枚地道にレタッチしていってるのではないかと思われます。その労力を考えるだけで途方にくれます。

もう一つは本編映像をBANK的に使用している箇所です(新規カットもあったように思えましたが)。こちらはタッチを加えていく手法ではなくセル塗りをベースに色替えや撮影処理を入れていく感じでした。複雑にノイズ等の処理を加えているので、大変見応えある映像になっています。

商業アニメでは見たことのない、まるでアートアニメを見ているような感覚に陥ります。ブルーレイが出たら何度も見直したいと思えるシーンでした。

 

思うに新海作品では星を追うこども、言の葉の庭で回想シーンがあり、どちらもセピア色で処理されていました。前者では漫画ナウシカのような斜めタッチ線を入れることで、後者ではノイズとグロー感を出すことで回想感を出そうとしていました。多分これらは撮影上で出来る範疇での処理ですが、今回監督は純粋なアニメ畑ではない四宮さんに回想シーン(厳密に言うと今回のは回想シーンではないんですが…)を振ることで映像的な広がりを求めたのかもしれません。

などと思いつつ、ユリイカの新海監督インタビューを読むと、監督の想像以上のシーンになってしまった、的なことが書かれていたので、本来はもっと普通のセルアニメっぽい処理を想定していたのかもしれません。確かにあそこは急に違う次元にいってしまった感じがありました。そういえば沖浦さんの作画担当パートも違う次元でしたね(笑)。

 

四宮さんのサイトを見ていると、過去に作られたアニメもありました。

www.youtube.com

↑色使い(エメラルドっぽい感じ)や塗りの表現がもう既に「君の名は。」とそっくりで、同じ人が作られていることが分かりますね。

 

www.youtube.com

こちらは背景が言の葉のポスターっぽいですね。

それにしてもこれ作るの、大変そう…。

 

現在発売中のEYESCREEM増刊「新海誠、その作品と人」では美術スタッフ座談会の一人として四宮さんが参加されていますが、君の名はでどういう仕事をされているかは全く書かれていません(笑)。そこが読みたかったのに…。どこかでしっかりとしたインタビューや解説などがあるといいのですが…。

コンテでどこまでこのシーンが設計されていたのかも気になります。絵コンテ本…を出す労力よりはブルーレイに監督が作られたビデオコンテを付けて欲しいですね。監督が声を当てているようなのでそれも大変気になります(笑)

 

 

何か変なことを書いてましたらご指摘宜しくお願いします…。